【つくしんぼ大作戦!】
それは、山にはまだ雪の残る春の日のことだった。
四月四日(水)・・・この日は、沖縄県誕生の日、またはオカマの日(3月3日は女の子の節句、5月5日は男の子の節句、あいだを取ってオカマの日らしい・・・汗)、山形にとっては「おしん」が放映された大事の日でもある。
この日、東京では十九年ぶりに4月に雪が降るという異常な気候であったが、本来雪が降るべき東北は実におだやかであった。逆に、ときより太陽が顔を見せ、やっと春を感じることのできる大事な陽気であった。
このざぶん家では、子どもたちは、現在春休み中。しかしながら、明日からは、次男は年長さんとして入園式に出席しないといけないので「今日しか遊べないんだっ!」と言いはじめ、長男は春休み最後の日なので「春休みを満喫しないといけないっ!」と言ってるし、三男は「なんだか、なんだかわかんないっ!」ってなもんで、彼らもいろいろと忙しいらしく、今日が地球最後の日のごとく、遊ぶにはとても「イイ日」らしい。
でも、ざぶんパパにはまったく、困った日だ。 ちょっと余裕がであれば、かわいい子供たちを連れて、やれ「映画だ!」、やれ「行楽地だ!」と連れてまわったのだが、今日は「子供たちの小学校の進級の準備」であり、さらに「保育園の準備」もあり、妻的にはかなりパニック状態で、しかも悪いことに(?)今日は町内会の嫁さん達の寄り合いがあるということで、殺人的に忙しいのでアクロバティカルに今日を乗り切らないといけないらしい。
そんな「今日は絶対に出かけるなんてダメよ!」のオーラを出しているざぶんママには、子供たちもさすがに近寄りがたいらしく、春の良き日をのんびり過ごそうとしているざぶんパパにすべてがお鉢がまわってくるのである。
「日曜日のパパは仕事で疲れている~♪」と口ずさみながら、「休みの朝に飲むコーヒーはうまいのぅ!」とソファにくつろぐパパ。
しかし、そんなことにはお構いなく、子供たちは、親鳥が巣に来るとひな鳥がピーチクパーチクさえずるがごとく、かわるがわる私の足にまとわりついて、どこかに行こうようとせがむのであった。
それを疎ましそうに見る妻は、「子供たちをどこかに連れて行ってあげたら?」とあくまで良きママを装い、私に進言してくる。しかし、彼女の内心を翻訳すれば、「仕事の邪魔だから子供たちを私の目の前から連れて行ってください」という嫁テレパシーが私の脳みそに響き渡り、外に行けという波動が胸に突き刺さるのであった。さすがに、わたしも、このままダメオヤジを続けていると大変だと、本能的に身の危険を察知した。
「じゃぁ、おやつ食べたら、散歩行くか!」と殺気にひきつる笑顔で、この状況を悟られないように、何気なく提案をした。心の中の「ゆっくりした休日」という構想は、ここにもろくも1対4の大差で抹殺されてしまったのである。
そうときまれば私も動いた。山も動くのである。まるで風林火山の如く・・・。休みの心地よいけだるさを満喫するために入れたストロングコーヒーを一気に飲み干し、春用の薄手のジャンバーをはおるとデジカメのもろもろの機材をキャリングバックに詰め込みはじめた。同時に指令を出し、子供たちには歯磨きとトイレを急ぐよう促した。
「出かけるよ~!」と子供たちに声をかけた。子供たちは靴を履き終えると「わぁーっ」と出てしまうので、「おにいちゃん、手をつないで!」と指示をだし、先手で動きを封印した。外に出ると、思ったほど寒くなく(といっても、10度ぐらい)時折、姿を見せる太陽が、体温を奪う北風から守ってくれる。しかも、その北風は吹いていない。近くを流れる最上川が、時折川風を運んでくれる程度だ。「これなら、ちょっと長めの散歩も大丈夫だな」と思った。しかし、この「大丈夫だな」が、のちのちの行動に影響を及ぼすことを、この時点では誰も知らないのであった。
~「さぁ。出発!」~
私も含めて、みんなの顔は楽しそうである。子供たちと広い歩道を手をつなぎながら、
「ひさびさの散歩だねぇ」
と私が言うと、
「そうだねぇ」
と子供たち。そして
「どこいくの?」
と聞くから、
「それは内緒だ」
とにやりとしながらパパが答える。
「おいしいものあるの?」
と二男が聞くから
「散歩には、うまいものなし!」
と即答。そんな問答をしながら歩く、歩く、歩く。
さて、歩いていながらも、パパは考えていた。というのは、子供たちの必殺技「もう飽きたから帰る!」の大打撃回避のためにも、目的をしっかりと持っていたほうがいいと思ったからだ。何事も、目的がない行動というのは成功の確率は低くなるのである。そこで、彼らに、予め今日の指令を伝えることにした。
「君たちに指令を与える・・・・それは、つくしんぼだ!」
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今日の重大指令は、「つくしんぼ」に関する二つのミッションである。思いつきで言ったようにも思えるが、実は計算しつくされた素晴らしいパパの発案なのである。
というのは、この散歩の少し前に、「つくしんぼ」を知らない沖縄の友人から、「つくしんぼ」を紹介依頼があったのである。つくしんぼがぼちぼちと生え始めたころ、そのあたりにあるつくしんぼを撮影し、その友人へのつくしんぼの紹介は一応すんだのだが、紹介した「つくしんぼ」の写真が私としてはいまいち納得できない出来なのだ。私としては、「つくしんぼ一本もの」よりも「つくしんぼ」が、まるで『ムーミンのニョロニョロ』並ににょきにょき生えているのを「これでもか!まいったか!」的に見せたかったのだ。
また、広島の友人における「つくしんぼをおいしく食べる」という文化を山形なりに検証してみたい、ということもあった。実はこの散歩、こう見えても全国規模の大事なミッションなのであった。(いつのまに!?)
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いざ散歩を始めると、春を身近に感じることがすぐにできた。今までは白と黒のモノトーンだった風景も、春の芽生えでようやく色のある世界に変わってきたからである。
歩き始めて2分30秒ぐらいで、赤い色を確認。ざぶんJr2号(二男)が報告してきた。
「パパ!赤色の物体を発見しました!」
「了解!赤い花確認!」
さて、椿の一種だろうか?相変わらず、私は花の名前わからない。
川に下る坂の途中に梅の花も咲いていた。
それを見たJr3号(三男)が、
「お花おいちそうだにぇ」
と発言をしていたので、
「お花はまだ美味しくない。実になってこそおいしいのだよ。」
と解説した。
「お花はおいちいの!」
と、Jr3号は断言し、語る親父のウンチクは風に流された。
気を取り直して、この梅を一枚撮ってみた。
実は私、「今年こそ、梅、桜、リンゴ、梨、桃の花の区別がつくようになろう」と人に言えない小目標を持っていた。花壇の花は覚えるにはハードルが高いが、食卓にのる果実の花であれば何とか覚えられるかもしれない。花の話題では、適当な自分にもおさらばだ。
「ざぶんさんて、果実の花に詳しいんですね・・・(ポ)」
「そんなことないよ。タシナミ程度だよ」
そんな妄想をダメおやじは描いていた。(どんなシチュエーションだ!)
さて、河原の遊歩道に下ると甘い梅の香りも薄れ、今度は川のにおいがしてきた。川砂の匂いというとわかる人もいるだろうか?ちょっと独特の臭いである。
空の上では、トンビが三羽飛び回っている。子供たちと同じ数だなぁと変に納得して、空を見上げた。
さて、川の土手やら脇には、お目当ての「つくしんぼう」は結構な数が生えていた。子供たちはそれを見た瞬間、反射的に躊躇なくもぎ採る。この子供たちの行動は、生まれたときからの遺伝子情報なのだろうか?あるいは、人間の持つ本能なのか?(そんな遺伝子情報はあるわけない)
しかし、その度いちいち一本一本私に持ってくるので、とりあえずジャンバーのポケットにしまうよう指示した。俄然張り切り、ガンガン摘み取りまわるJr1号と2号。この調子ならつくしを食べるという目標は、すぐにできそうだなと思った。
でも、もう一つのミッションのニョロニョロ撮影ミッションは果たされていない。このあたりのつくしが生えている密度が、1m四方で5本から10本程度では物足りないのだ。1m四方で50本ぐらいあってこそニョロニョロといえるのだ!(そんなのは実は私も見たことないのだが・・・)
そのつくしんぼ密林は絶対あると確信する隊長は、部下3名を連れて進軍する。われわれ、つくしんぼう探検隊は、謎のつくしんぼうニョロニョロ密林を発見することはできるのであろうか?
【次回こうご期待!】
この続きは、明日の夜(たぶん・・・)
~「川から山へ」~
さて、つくしんぼの密林を求めて、旅を続けるざぶん隊は、河原でつくし達に出会う度、そのつくしにハイエナの如く群がる。(Jr1号2号・・・写真1)
彼らは、「ぐるるっ!」そんな唸り声が聞こえそうな雰囲気で、獲物を探しまわっている。今、彼らを止めたら、こっちが食われそうでった。
でも、けなげなつくしたちを思いやり、「短いのは採るな。そのままにしておけ!」と隊長は指示するのが精いっぱいであった。
散歩を続けながら脇を見ると、並行して流れる最上川も穏やかそのもの、まためぼしい獲物もしばらく目の前に現れることはなかった。騒がしい彼らの前には、獲物たちも隠れているのであろう。
そして、まもなく川の遊歩道が終わりになる。この時点で、採ったつくしは50本以上。本来デジカメを入れるバックがつくしんぼに埋め尽くされている。これ以上、つくしんぼを詰め込まれたら、私が困るので、つくしんぼ狩りはしないよう隊員全員に命令を出した。「了解っ!」と返事だけは相変わらずいい。
でも、「つくし発見!」とまたもや1号と2号は、命令むなしく獲物に群がって、ガンガンつくしを採って来る。
「だから、いらないんだってば!」と親父には泣きが入った。
そして、遊歩道は終点を迎えた。つくしんぼのジャングル密林地帯は、結局われわれの前には姿を現さなかった。河原には、つくしんぼ畑は存在しなかったようだ。山ならあるだろうか?後ろ髪惹かれる思いはあるが、我々の探検は終わったのだ。。
さて、「家に戻るか!」と今度は山側の大通りを、家に帰ることにした。途中、道沿いの家先で「寒椿?雪椿?」またもや詳細な名前のわからぬ花に出合う。「椿だと思うんだけど、とりあえず写真撮っておけば、マイミクさんたちが正しく教えてくれるさぁ~」と沖縄的思考でデジカメで撮影した。(写真2)
私は、ふと道路と並行する線路を思い出した。
『この線路を超えると山道がある。不動明王もある。山にも登れる。時間もある。そして何かがあると私の直感は呼んでいる』
ちょっと久々の散歩で気分がハイになると、なんでも「あり」になるのである。何も状況を知らない子供たちには、「君たちの好きな線路を見てみよう!」と子供の好きな乗り物系で、家に帰ることになっていた頭を麻痺させて、向きを変えさせた。
線路を渡る土手のほそ道に向かう途中、きれいな水仙が咲いていた。(写真3)
このままで、終わらないのが探検である。野生の感に従った我々に、次回すごいことが!
※第三章も一緒にアップしました。そちらからどうぞ。
今までのあらすじ・・・・
つくしんぼ密林をさがす、ざぶん親子の探検隊は、つくしんぼこそ見つけるが、密林は発見できないでいた。帰りたい子供たちをよそに、親父は執念を見せる。あらたに、川エリアから山エリアへと場所を変え探検はまだまだ続く。
・・・・本編に戻る。
~「密林発見!」~
線路を渡り、山側のエリアへ行けば、何か新しい発見があるに違いないと思った親父隊長の強引な作戦で、ざぶん探検隊は、行き先を自宅へ変更した。「この先が怪しいんだよなぁ」と思った線路への道は、途中他人の敷地を越えなければならなかった。地元では、便利な言葉がある。そんなときは、地元語で「ごめんしてけらっしゃい!」(ごめんなさって)といえば、たいがいは問題ない。そういいながら、さっ!と他人の畑を横切り、線路のある土手を登ろうとした瞬間!それは、見たことのない光景が広がっていた。
そう、見つけたのだ。我々探検隊は、幻の桃源郷を・・・もとい「つくしんぼの密林」を・・・(といってもつくしんぼは小さいので高さ10cmぐらいの密林・・・)
私も子供たちも、狂喜乱舞した。
「おーい。みんな見ろー!つくしんぼ畑だ!つくしだらけだ!」「わーい」「すんげぇ」「これ全部つくしんぼ?」
といってるうちに、みんなバラける。
「Jr2号、だからもう採らなくていいって(--; 」
「Jr1号、あしもと、あしもと、踏んでる、踏んでる」
「Jr3号、恐がらなくていいよ、こっち来なさい。・・・つくしんぼニョキニョキあるから、足にぶつかって先にいけない?かわいいのぅ」
とにかく、田んぼ2枚分の休田地帯がぜんぶ、つくしんぼがピョンピョン、ニョロニョロ!地元育ちの私も、さすがに里の中でこんなの見たことない。子供たちそっちのけで写真を撮った。
(しかし、興奮するとだめだねぇ。あんまり映像が美しくないなぁ。・・・本人談)(写真1と2)
歓喜する子供たちと興奮する親父。こっちの方が絵になったかも知れない。何はともあれ、沖縄県のみなさんにおみやげ写真が撮れたので、ミッションはすべて完了した。あとは、つくしのグルメリポートさえすれば、完ぺきである。
が、しかーし。ここでまた親父は考えた。「線路を越えると、ほとんど人気のない不動明王のお寺があったはずだ。滅多にこんなチャンスはない、そこに行ってみよう。」と。
そして、踏みきりのない線路を越えるのだが、ここでローカル線に轢かれたのでは、三面記事に「親子無謀のつくしんぼ狩り!」「何があった!? 死の散歩道」「親父無謀!子供巻き添え!」などと書かれかねない。それよりも、めったに来ない列車に轢かれるほど、「アホ」な話はない。慎重に、なおかつスピーディに線路を渡った。せかしたのか悪かったのか、2号は土手を転がってしまった。しかし、転がりながらも、みごと「キャット空中三回転」ならぬ、「にゃんと一回転」で着地「10.0」を決め、何事もなかったかのように、そのまま走って行く。親父は、思わず口を開けて、見とれてしまった。
この人気のないお不動様は、参道がない。表の参道は線路に切られているし、脇の参道は、となりの家の敷地の中を歩いていかないと通れないのだ。(写真3)そんな悲しいお不動様にお祈りを捧げ、無事つくしんぼを発見できたお礼をした。
しかし、まだまだ冒険がおわったわけでない。タフな男たちは、次なる試練に臨むのであった。
~散歩改め、登山?~
不動明王にお参りしたことで、変にパワーを受けた親父は、「このまま大きく道草を食って、山の頂上を征服しよう!」という提案をした。すぐ近くの山道から、この小高い山に登ることができる。この道は、私が時々山登りのトレーニングに使うコースで、大人の脚で10分もかからず街を見渡す眺めのいい景色が待つ頂上に出られる。「このつくしんぼミッションの達成感を、山の征服感とともに味わいたい」などと訳がわからない考えに、さらに気持ちがみなぎってきたのだった。
すぐ、道の分岐に出た。左にまっすぐ進めば家に帰れる。右に曲がれば山道になる。親父は、道を知らぬ子供たちが何も言わぬことをいいことに、迷わず右に曲がった。ちょっとすると、すぐに傾斜がきつくなった。みんなの息遣いは荒々しくなる。
「本当に家に向かっているの?ハアハァ」と2号が聞いてきた。
「そのうち、家には戻れると思います。どうぞー。ハァハァ」
もう、親父にとっては、山道だけが帰り道になっていた。
「頂上目指して、エイエイオー」とすこぶるハイテンションなバカ親父は、頭悪いぐらい元気が有り余っていた。
そんなハイテンションな親父はほっといて、子供たちを観察すると、
Jr1号は、すでにやる気は失せてしまったのだが、それでもしぶしぶついてきている。きっと、「親父のワガママが、またはじまったよ・・・言い出したら、止まらないからなぁ・・・」と思っているに違いない。
Jr2号は、父の言葉を真に受け、やる気満々で駆け足で登る。ぐんぐん登る。きっと、彼は何も考えてないに違いない。体を使うことがただただ楽しいに違いない。違う意味で恐るべし。
それにしても、すごいのはJr3号。3歳児のくせに、山道をものとせず登って来る。きっと、親父の言うことを信じきっているのであろう。あまりにもケナゲだ。
最初のきつい部分を乗り越えた。しかし、大人に合わせた段差は、子どもの脚ではさすがに足に来るらしく、彼らの息遣いはさらに荒くなってきた。「休憩」ということで2~3回ぐらい休みを入れた。「兄ちゃんは、弟の面倒見をみてね!ハァハァ」というと、長男、次男、三男の順序で整列して登り、それぞれが後ろを気にしつつ登っていた。そんこんだで、のべ20分ぐらい登っただろうか、うっそうとした木々もなくなり、ついに、われわれは頂上に着いた。
「そこのあずまやに行って休んでください。どうぞ。ハアハア」
山の上に建てられたあずまやで、しばし休憩を取った。10度ぐらいの気温でも、さすがに汗ばんでいる。その汗を拭きとるがごとく、時折吹くそよ風が心地良い。一時の清涼感を味わった。
そんないい景色を見ながらしみじみ思った。「思えば遠くへ来たもんだ。なぁ君たち。・・・・・ん?なんか忘れているぞ。」気がつくと、我々は昼飯も食わず、かれこれ一時間以上、散歩している。彼らは来る前にたべたおやつがちょうどいい感じにこなれたらしい。あまり空腹に文句をいうものはいなかったが、私はかなりお腹が減った。
休憩にも飽きて、遊びまわっているみんなに、「さぁ、帰ろう!ママが待つ家へ!」と言い放った。『ママはきっと昼御飯を作って、首を長くして待っているはずだ。』そう思って、長い散歩の道のりを、ようやく折り返し帰路につくことになった。
帰りは、やる気がうせるのを防ぐため、別のルートで降りることにした。「もうつかれたぁ」「歩けない!」とならないために、子供たちの好奇心を利用するのは親の常とう手段だ。別の道を降りると、この前お彼岸でお墓参りしたお墓の近くの鳥居の下に出るルートである。
途中、スズメバチ捕獲の罠にかかっているスズメバチを観察したり、沢山あるお地蔵さんに出会う度、みんなでお参りしたりしながら、ご機嫌なまま歩いて行く。
最後の下り坂になった。ここの道は落ち葉がいっぱいで、滑り台のごとく、かなり滑る道になっていた。
今まで遊びまわっていたJr2号はさすがに膝に来たようである。膝が笑い始めているようだった。その坂道、幾度となく「ステン!」と尻もちをついた。それを面白おかしく見ていたJr3号も、「ツルン!」と滑って「コロン!」と転がった。私が手をつないでいたので、そのまま空中を泳いだ。それがおかしくて、彼はまたわざと滑ってみせる。今度は、尻もちつかぬよう、私が「グイッ」と手を持ち上げるので、足が空中を漕ぐような感じになった。それが面白くて、「ゲラゲラ」笑って、また「ツルン!」と滑ってみようとする。何回もするので、しまいには「コラッ!」と私に怒られた。
そんなことをしながら、ようやく鳥居の下まで降りられた。あとはだらだら普通の道を歩くだけである。途中、歩いている我々の目の前を、列車が通過した。さっきの「轢かれたら三面記事」を思い出し、ひとり思い出し笑いをした。
Jr2号の脚が止まった。とうとう恐れていた事態に直面する。彼は「もう少し行こう!」の掛け声に反応せず、頑としてしゃがみこんでいる。彼の膝に限界にきているようだ。あれだけ無駄に動き回れば、さすがに彼のサイボーグの膝もただではすまなかったようだ。手をつないでいるJr3号も、あわせて「眠いモードの予兆」が現れ始めた。ちょっと機嫌が悪くなってきたのだ。これはまずい!と直感した。こうなれば最後の手段である。家まであともう少しの距離だったのだが、目の前に人参をぶら下げることにした。
「もうちょっと行くとジュース売っているところがあるなぁ・・・」とつぶやいてみた。
「いくいく!」すぐに彼らは反応した。また歩き始め、歩きながら、「フルーツジュースとラムネどっちがいいかな?」などと気を散らしながら売っているところまで誘導する。
しかし、彼らは厳しい要求を私に突きつけた。「一人一本!を要求する」という労働組合の要求に、われわれ経営陣は難色示した。労使交渉は紛糾し、もうちょっとで経営陣交代まできわどいところまで行ったが、幸い財布を持ってきているのは私だけなのでかなり強気だ。労働組合の妥協を引き出し、「大きいジュース1本を三人で」という妥協案でまとまることができた。
しかし、もう一つ「つくしんぼの天ぷらを昼御飯に要求する」という案もサインさせられた。なぜに、幼い彼らは「つくしの天ぷら」なるメニューをしっているのだ?私は作り方など、まるで知らぬ。それなのに了承してしまった。はて困ったなぁ。どうしようか・・・「なんくるないさぁ~」(つづく)
※この物語は、最終章です。第五章が先にありますので、ご注意ください。
~ボスキャラ登場「つくしんぼ大王」いや影の帝王は・・・~
なんとか、ジュースサービスのおかげで、子供たちを背負うことなく自宅に到着することができた。
なんとも、長い旅路であった。距離にして、6km以上(グーグルマップ観測)。時間にして、1時間45分。高低差150m。これを歩いた3歳児、5歳児、7歳児に拍手を送りたい。
「ただいまぁ!」「ママー!つくしんぼいっぱい採ってきたよ!」「1時間半以上歩いたんだって!」子供たちが、家の中に飛び込んで行った。
(さぁ、今日は何だろうなぁ。お昼御飯はできたかなぁ?)と思って、忙しく裁縫をしているママに「ご飯は?」と何気なくきいた。
それが、そもそも間違いだった。
「忙しくて、そんな暇ないでしょう!いつ帰ってくるかわからないのに!」
ガ━━Σ(゚Д゚|||)━━ン!!
どうもママは機嫌が悪いらしい。(((゙◇゙)))カタカタカタカタ
名前を付ける作業がどうも順調ではないみたいだ。食事は、雰囲気から私が担当することになっているようだ。(--;オニヨメニッキニ ナッテナイカ?
ママと子供たちのリクエストをまとめると「引っ張りうどん」と「つくしの天ぷら」・・・(~_~;ヤッパリ ワタシガ ツクルノネ
解説しよう!
「引っ張りうどんとは、干しうどんをゆで、煮た鍋のまま(いわゆる釜揚げね)ドーンッ!とだして、つけだれは、納豆に葱をぶっ込み、醤油をぶっかけ、そこにつけるという、山形名物の食べ物である。」
今回は、このうどんのトッピングにサバ缶を用意してみました。また、うどんは、広島の友人たちに敬意を表して、岡山県の「たなかのうどん」、醤油は香川の「鎌田醤油」でいってみました。しかし、冷蔵庫を見ると肝心な納豆が1袋しかない!(>_<)少なーい。人数からすると、2袋はいるはず。困った。
とりあえず、ママに相談してみた。「仕方ないわねぇ!」といってくれ、近くのスーパーから買ってきてくれるそうだ。「やったねママ! 明日はホームランだ!」
ママは、出かける準備をしている。そのただならぬ気配を察知したものがいた。ママに取り残されてしまうと思ったJr3号である。彼は、疲れと眠気で、去りゆくママに泣き叫ぶ。「マ゛マ゛ーっ!いっじょにいぐーっ!」
「泣くな。3号」とは言ってみたものの、そんなものでいうこときくわけがない。仕方がないので、私も3号にお付き合いすることにする。3号と一緒になって私も叫ぶ。
「俺を置いてかないでくれー。一人にしないでくれー。この子たちの面倒は誰が見るんだぁ~」横目でそれを見て、無言でママは去っていく。
「ガラガラ!ピシャッ!」
あっけなく行ってしまった。
「グツグツ」台所でお湯が煮え立ったようだ。「はいはい、お遊びはそれぐらいにして、うどん煮る手伝いよろしく。」
なぜか3号も泣きやみ、台所の椅子を持ってきて、ガスコンロを遠くから覗き込んでいる。うどんを1袋半入れた。
そのあいだに、天ぷら油の余熱が完了したようだ。つくしんぼの山を見て(写真1)、私は「ふぅーっ!」とため息をついた。
「これからどうするんだ?このつくしんぼを!」
手がかりを探した。マイミクさんの日記に何か書いてあったはずだ!携帯から探してみる。しかし、このマイミクさん、書き込みが非常に多く、どこに書いてあったか全然探せない。
「ウガーッ!!」まるでウゴウゴルーガだ。
よくわからないが、親父に聞いてみる。「つくし?んー調理したことないなぁ」やはりあてにならなかったか。
「お袋は?」肝心な時に遊びに行っていないようだ。嫁は?そうだ買い物だ!
「落ち着け!俺。こういうときは深呼吸だ。スゥースゥーハー。スゥースゥーハー。ちがう!だめだ、これはラマーズ法だ。手のひらに人と書いて、それを飲む。」そんな、関西人のボケと突っ込みを心で描きながら、自分一人でやってみることにした。
「とりあえず、洗うのは基本だろう!?」ざるにつくしをあけると、流水で洗ってみた。
「そのあとは?」ちょっと緑色に胞子を広げ始めたのはさすがにだめだろう。たしか、ちまちました作業があるといっていたなぁ。ヘタを取るのか?
Jr2号が来て、「パパぁこれ取るの?」とヘタを取ってくれる・・・つもりがブツブツ千切り始めた。「もういい。手伝わなくていい・・・」
それを遠目で見ていた親父いわく「どうせ、毒はないんだから、どんな食べ方しても死にはしないだろ!?」
その言葉で吹っ切れた。
とりあえず、堅そうなヘタと開ききった胞子部分は捨て、すべてをビニール袋に突っ込んだ。
そこに天ぷら粉を入れて、空気を入れ膨らまし、「カシャカシャカシャ」とシャカシャカポテトのごとく粉をふるった。
天ぷらの温度は間もなく180度。とりあえず失敗した時の保険に、サツマイモとピーマンも天ぷらにしておくことにした。
手堅くサツマイモとピーマンを天ぷらにした。うどんは8分となっているが、5分で止めた。
これからが本番だ。つくしを2~3本まとめて、かきあげのようにあげた。
「パパ上手だねぇ」2号と3号は喜んでいる。(おまえら、プロの料理人の揚げているところみたことあるんか・・・何と比べてそう褒められるのだ?)
オヤジをほめたい気持ちはわかるが、今の状況で褒められると、ただの褒め殺しだ。
とりあえず、衣を多くして、かき揚げっぽくした方がうまそうだ。揚がりたての最初の方の成功とはいえないものをつまんでみた。
「ん?けっこううまい。これは何の感じに似ているのか?まずくないぞ!」
食感がいい。シャキシャキだ。でも飲み込む時に、ヘタがのどに引っ掛かかるような感じがする。
「ヘタは邪魔だったのかなぁ?」
と思ったが、もうすべて揚げてしまった今、一寸の悔いもない。でも、次回はこのヘタは取っておこう。
揚がった天ぷらと、茹であがったうどんを茶の間に持っていき、準備が整うと、ちょうどママも帰ってきた。
「いっただっきまーす!」みんなで、ズルズル、サクサク食べ始めた。
「つくしんぼのお味は?」私は恐る恐るきいた。
「おいしいねぇ。パパ上手だねぇ」涙ぐましいJr2号。お世辞か?いや。どんどん食べるどんどん食べる。3号もバクバク食べる。1号もサクサク食べる。
彼らにとっては真面目においしいらしい。
食べた女房いわく、「たらの芽に味が似てるけど、もっとキドクない感じ。」
キドイとは、青臭いと言ったらわかるだろうか?キドクない、つまり、食べやすい食材なんだろう。
結論、ヘタを取れば、つくしの天ぷらはおいしい!今度は、卵とじに挑戦だ!(来年だな。それは・・・)
でも、その前に、疲れた。本当に疲れた。書くのも疲れた。
~おわり~
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